『木を糸のごとく編む』千鳥格子という組手技法 …(一般の方もご覧ください)

木工あれこれ

千鳥格子(チドリゴウシ)

我が家の鍋敷きです。鍋敷きがどうこうと言うより、画像を見ていただくと「あれっ」と思いませんか。
(木の棒が編まれている?)

組み上がった千鳥格子

この鍋敷きは一本18ミリぐらいのブナの角棒を組み、タテヨコ300ミリぐらいの大きさ。曲げることの出来ない木が、まるで編まれている様に組んであります。

作り方は、木の欠き取り方を普通とは変えて作ります。(二分の一ずつではないという事)仕組みはパズルのように組み上げます。

千鳥格子は飛騨の匠の技

元々、千鳥格子は飛騨の匠の技法です。私は飛騨高山の工芸学校在籍時に教わりました。

聞いた話によると、千鳥格子を初めて作った人が神社の扉に組んだところ、扉はすぐに壊され千鳥格子は持ち去られてしまった、とのこと。
その後も、直しては盗まれるの繰り返し。持ち去るのは他の匠達。扉の仕組みは考えても分からず、ついには暴挙におよんでいた訳です。
そして千鳥格子の技法は、皆に知れ渡る事となったそうです。

千鳥格子の秘密

タイトルの通り今回は千鳥格子を分解して、その構造をお見せしたいと思います。秘密と書きましたが、構造を知っている方は多いと思います。

まずは千鳥格子の完成画像。一本18ミリほどのブナの角棒を10本使って、縦横300ミリほどに組んであります。

組みあがった千鳥格子

これを分解するには、動く棒を探して深くかみ合わせます。するとずらす事の出来る棒が出現します。それらをずらしてみます。
下の写真は深くかみ合わせた後、白3本をずらしたところです。

深く白黒の棒をかみ合わす、すると棒を動かせる空間が出現

上のものを、右側面から撮ったものが下の画像。

棒一本分の空間が生まれ、スライドさせてずらしています

下の写真は、ずらした白い棒の真ん中1本を抜いてみました。これを見て分かるように、角棒には3分の2欠き取ったものと、3分の1欠き取ったものがあります。
奥の外した白い棒が3分の1の欠き取りです。つまりずらせる白い棒3本が、3分の1の欠き取りとなります。

画像でも分かるように3分の2の欠き取りの棒を、お互いに深くかみ合わせることによって1本分のスペースが生まれる訳です。
組む時は、ずらせる3分の1の欠き取りの棒を定位置までスライドさせ、深くかみ合わせたものを平らに戻す。すると1枚目の画像のようになります。

奥の白棒が3分の1の欠き取り、手前の黒棒が3分の2欠き取り

下の写真が部品になります。3分の1の欠き取りが3本(白)、3分の2の欠き取りが7本(白2本、黒5本)となります。欠き取り位置は全く同じ、深さが違うだけです。
加工は、正方形のマスが精度良く(90度に)出るようにしないと、組む時に固くなったり、外枠をつけた時に納まりずらくなってしまいます。

またこの格子は組んだときの接点が少ないので、角棒をきつめに作り、格子を大きく使うときは裏板があると安心です。格子が小さいときは、そんなに気にする必要も無いと思います。

3分の1と3分の2のパーツ

最後の1枚は、ずらせる白を3本とも抜いたところです。こうなると止めている棒が無いことになるので、持ち上げるとバラバラになってしまいます。

組む時はまずこの状態を作り深くかみ合わせます。
出来たスペースに3分の1の白棒を差し込んでいきます。

今回、千鳥格子を知らなくても、木工経験者ならば作れるように書いたつもりです。また素人の方でも理解できることを目指しました。
とにかくパズルみたいで面白いのでチャレンジしてみて下さい。

最後に千鳥格子を利用した作例です。
工房に持ち込まれた陶器を千鳥格子で囲み、文机の脇に置く灰皿としました。

千鳥格子の灰皿(タモ、コクタン、拭き漆仕上げ)

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